のこぎりの目たて

のこぎりの目たて?
こちらも死語に近づいていますね。

※と書き出しましたが、今回のブログは長くなりそうなので、
中断を繰り返し進んでいきます。6月11日朝、書き終わりました。

周りの大工さんも最近は目たて屋さんに、目たて依頼をすることがなくなっています。
かつては、一現場が終わると大工さんたちは使用したのこぎりを「目たて屋」さんに出していました。

目たて屋さん??

「目たて屋」さんとはのこぎりの刃を整えてくれる職人さんのことです。
簡単に言えば、よく切れるようにしてくれることですね。

目たて屋さんにお邪魔することになったのは
静岡民家の会で道具講座の担当となり、
地元で刃物の話を聞かせてくれる人を探したことからです。

そう言えば、
藤枝旧商店街にのこぎりの看板が出たお店?があったっけ。
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思い出したのは、この浜野鋸店さん、屋号は「中屋春次郎」です。

このお店は田中城の城下町の一角にあり、お城を支えた職人たちが集まるエリアに位置します。
お城って、職人さんを育てる役目を担ってきたと思うのです。
お城の周りには職人を表す町名が多いように感じるし。

現在の春二郎さんは何代目、と言ってたっけ?メモべた露呈。
かつては鍛冶職人さんを雇い、素材の鉄からのこぎりを作ってきたのです。
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「家の裏には鍛冶場があって、鉄を焼き、重い金槌でたたいて焼きを入れて
のこぎりをつくっていたんだよ」
「のこぎりに焼きが入るから、金づちも焼きが入ったかなづちをつかうんだよ」
「それは暑くて大変だったね」
「火が大事なんだけど、かい炭だと火が強すぎる・・・・」・・・??

「それじゃ、刀鍛冶も出来ますよね」

「そうだよ。刀も作ってたんだ」 「へー」

「昔は藤枝にも20件余りの目たて店があってね・・・」
「今ではうちだけだけど、私ももうやってないんだ」

「ここにあるのが私が作った最後ののこぎりなんだ」
ガラス戸の棚には数本ののこぎりが置かれていました。
「見せてもらっていいですか」「いいよ」

棚から慎重に出してくれました。
と、突然!
「おいこら、素手でのこぎりを触っちゃだめだ!」
いきなり怒られてしまいました。

はがねで出来ているのこぎりはさびを嫌います。
ましてや中屋春次郎には最後の仕事の商品(作品)です。
「すいません」
建築の仕事をしているのに、道具への気配り不足でした。
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これは枝切り用ののこぎりかな。
この2種類ののこぎりには中野さんのこだわりが詰まっています。
刃の違いを見ておいて下さい。

「のこぎりは、1枚、2枚と呼ぶんだよ」

「のこぎりにはその店の特徴が出るんだ。
刃の勾配と深さ、あさりの出し方なんかにね」

のこぎりは手元を厚くして、先に行くにつれ薄くつくる。
刃の部分に焼きを入れ強度を上げるのですが、反面折れやすくなるので、
そのように作るのだそうです。(焼きが入ってなければ曲がるので折れない)

そう言えば、半分に折れたのこぎりいくつも見たことあるな。
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先が折れたのこぎりを見せてくれた。
焼き入れのバランスが悪くても折れたりするんだろうなあ。
刀だったら、命どりだ。


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棚の中に38年前の料金表が貼ってある。

ある大工さんが言っていた。
「もう十数年前から替え刃ののこぎりを使っているよ。」
「一つの現場が終わってのこぎりを目たてにだすと
5~6枚になるから、1枚¥3.000にしても¥15.000かかってしまう」
「替え刃なら5.000円ぐらいで済むしね」

建築コストが厳しくなる中、道具もメンテナンスコストと効率のなかで選択される時代。
目たて屋さんの仕事が減っていきました。

「仕事を辞めた大工さんが、使っていたのこぎりを売ってくれって言ってきたり、
目たてに出したが、一向に取りに来なかったり。時代なのかねえ」

棚の中には、行き先を失ったのこぎりが数本残されていました。
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目たて依頼があったのこぎりをみると 「大工さんの癖や性格がわかるね。」
同じように「目たてにもその職人のこだわりや技術が見えるんだよ。」
「もちろん私が作ったのこぎりでないのも目たてを頼まれます。
比べてみると違いがわかるでしょう。」
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確かに、刃の勾配の違いもわかります。

どんな仕事のためののこぎりか、どんな木を切るのに使うのか、
力の入れ具合なども考えて目たてが行われます。
切れ味を競う目たての技術は使う相手(人、木)を見ることから
始まるんだなと思います。

「あさり出し方は先を広く、手前(手元)は狭くするんだよ。
そうすれば力が少なくてひくことができるからね。」
日本ののこぎりは引いて挽く。
欧米は押して挽く。
なるほど。
あさりの説明は ここはこちらに頼ろう。http://e-tech.life.hyogo-u.ac.jp/kyouzai/nokogiri/sikumi.html

あさりだしにはいろんなサイズの金づちを使います。
往年の道具を見せてくれました。
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これは目たての際、のこぎりを挟む板。

目たては根気勝負の仕事です。
切れ味はそれで決まる。

目たて依頼ののこぎり状態は様々です。
刃こぼれのしたもの、部分的あさりが曲がったり減ったもの。

作業はまず、のこぎりの刃の上端の通りをまっすぐにすることから始め、
そこから刃の形を作っていき、あさりを出し、研いでいく。
持ち込まれたのこぎりが自分の仕事ではなかったら、他の職人の目たて技術も学びながら。
最後にあさりの再調整。
こんな手順かと思います。

「こののこぎりは、刃の間隔を先と手元と変えたんだ」
最後の仕事として棚の中に置いてあるのこぎりを取り出しました。
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「こうすれば力が伝わりやすく、切りやすいし、用途も広がるんだよ」

力任せに挽くのこぎりではのこぎりが泣いている。
のこぎりにも、人にも、木にも負担をかけない刃をつくる仕事が私の仕事だよ。
中屋さんはそう言いたいのだと思いました。

「そののこぎり売ってますか。」
「残り少ないけど数枚あるから、いいよ。」

のこぎりの包み紙は昔から、新聞紙やチラシ紙。
油紙もあったな。
丁寧に刃を包んでくれて
「大事に使ってよ。」「はい」
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仕事場の隅には、引き取りに来ないのこぎりが残されています。
仕事の移り変わり、人の移り変わり、道具の移り変わり、価格の移り変わり。

チラシ紙に包まれ、取り残されたままのこぎりにも
職人の技が潜んでいます。

中屋さん、ありがとうございました。
きっと、間違って書いたところあるかと思います。
本当に言いたかったところを汲んでいないかと思います。
でも、藤枝で守ってきていただいた「職人の技と心」は
伝えられそうです。 これからも話していきます。

ドイツには職人の技術の質を表すマイスター制度があり
社会が大切に職人を育て、その技術や修行歴を評価、尊敬している。
そんなドイツでも先日のNHKで、ものづくり現場の危機が紹介されていた。
と誰かが言っていました。

やっぱり、家は自分(住まい手さん)が手を出せる場所がいっぱいある家がいいなあ。
子供たちは家に手をかける親の背中を見て育ち、ものづくりを覚えていくからね。

あっ、板塀の板が積んだままだ。息子に電話し直す日を決めよう。
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by hiho-sugi | 2012-06-03 09:23 | 大切なものを残す
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