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塚本こなみさん講演会

静岡民家の会の総会が開かれました。
静岡民家の会はスタートして10年目を迎えました。

総会は例年どり報告事項の議事と講演会です。
今回の講演会は 女性で樹木医第1号になられた
塚本こなみさんでした。

人生が変わったと言われた『藤』との出会いから
藤(命)への思いなどを2時間お話くださいました。
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春野町にある大光寺の大杉、直径3.5mの大木の樹齢を
測ったときのこと、足利での大藤(1本で600m2棚面積をもつ)
の移植体験のお話を通して「木のいのち」について教えていただきました。

「木の命はどこになるかわかりますか?」
そう質問されました。
木の家づくりを本業にする日々ですが
改めて聞かれると・・・??。

「枝葉の状態はすべて根にある」
枝葉に水や栄養分を送る
1年目の年輪、外皮から3枚目の層が
木の命だとおっしゃいました。

木の中が空洞化した古木も見かけますが、
それでも枯れず倒れずがんばっているのは「木の命」が
生きているからのなのだと聞くと
力が湧いてきました。

こなみさんは藤の話になるとさらに強く
木の命への思いを語られ、それが響いてきます。

藤との出会いはこの足利の大藤、そこから人生の大きな転機になたそうです。
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(このプロジェクターの画面でうまく伝わらないけど)
その移植も難しいとされた藤は現在1000m2(300坪)の棚に成長したそうです。

これからはつなぐことに時間を使いたい。
受け継ぐこと、つなぐバトンを渡すことが難しくなった時代、
「藤への思いや習得した藤のことすべてを繋いでいきたい。」
と話すこなみさんにひきこまれていきました。

藤は1本で100m2(30坪)の棚に広げる。
窮屈はいけない。
マメ科の藤は水が必要、
自立出来ないから常にからまる相手を探している。

そう聞いて、昨年、藤だなを施工させていただいたことを
思いだしました。
棚の高さ、組み方・・・・藤について知らな過ぎた。

信条は
「出来ないかもしれないと思うことで出来ることもできなくなる。
少しでも可能性があればやってみる。」
そうして、こなみさんによって多くの樹木の命がつながれていきます。
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木と人の関係、木と人の信頼関係が木の命を繋いでいくことになる。

お話が終わると参加者みなさんの顔がとってもいきいきされていたのが
印象的でした。
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by hiho-sugi | 2012-06-25 07:50 | 古民家

のこぎりの目たて

のこぎりの目たて?
こちらも死語に近づいていますね。

※と書き出しましたが、今回のブログは長くなりそうなので、
中断を繰り返し進んでいきます。6月11日朝、書き終わりました。

周りの大工さんも最近は目たて屋さんに、目たて依頼をすることがなくなっています。
かつては、一現場が終わると大工さんたちは使用したのこぎりを「目たて屋」さんに出していました。

目たて屋さん??

「目たて屋」さんとはのこぎりの刃を整えてくれる職人さんのことです。
簡単に言えば、よく切れるようにしてくれることですね。

目たて屋さんにお邪魔することになったのは
静岡民家の会で道具講座の担当となり、
地元で刃物の話を聞かせてくれる人を探したことからです。

そう言えば、
藤枝旧商店街にのこぎりの看板が出たお店?があったっけ。
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思い出したのは、この浜野鋸店さん、屋号は「中屋春次郎」です。

このお店は田中城の城下町の一角にあり、お城を支えた職人たちが集まるエリアに位置します。
お城って、職人さんを育てる役目を担ってきたと思うのです。
お城の周りには職人を表す町名が多いように感じるし。

現在の春二郎さんは何代目、と言ってたっけ?メモべた露呈。
かつては鍛冶職人さんを雇い、素材の鉄からのこぎりを作ってきたのです。
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「家の裏には鍛冶場があって、鉄を焼き、重い金槌でたたいて焼きを入れて
のこぎりをつくっていたんだよ」
「のこぎりに焼きが入るから、金づちも焼きが入ったかなづちをつかうんだよ」
「それは暑くて大変だったね」
「火が大事なんだけど、かい炭だと火が強すぎる・・・・」・・・??

「それじゃ、刀鍛冶も出来ますよね」

「そうだよ。刀も作ってたんだ」 「へー」

「昔は藤枝にも20件余りの目たて店があってね・・・」
「今ではうちだけだけど、私ももうやってないんだ」

「ここにあるのが私が作った最後ののこぎりなんだ」
ガラス戸の棚には数本ののこぎりが置かれていました。
「見せてもらっていいですか」「いいよ」

棚から慎重に出してくれました。
と、突然!
「おいこら、素手でのこぎりを触っちゃだめだ!」
いきなり怒られてしまいました。

はがねで出来ているのこぎりはさびを嫌います。
ましてや中屋春次郎には最後の仕事の商品(作品)です。
「すいません」
建築の仕事をしているのに、道具への気配り不足でした。
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これは枝切り用ののこぎりかな。
この2種類ののこぎりには中野さんのこだわりが詰まっています。
刃の違いを見ておいて下さい。

「のこぎりは、1枚、2枚と呼ぶんだよ」

「のこぎりにはその店の特徴が出るんだ。
刃の勾配と深さ、あさりの出し方なんかにね」

のこぎりは手元を厚くして、先に行くにつれ薄くつくる。
刃の部分に焼きを入れ強度を上げるのですが、反面折れやすくなるので、
そのように作るのだそうです。(焼きが入ってなければ曲がるので折れない)

そう言えば、半分に折れたのこぎりいくつも見たことあるな。
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先が折れたのこぎりを見せてくれた。
焼き入れのバランスが悪くても折れたりするんだろうなあ。
刀だったら、命どりだ。


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棚の中に38年前の料金表が貼ってある。

ある大工さんが言っていた。
「もう十数年前から替え刃ののこぎりを使っているよ。」
「一つの現場が終わってのこぎりを目たてにだすと
5~6枚になるから、1枚¥3.000にしても¥15.000かかってしまう」
「替え刃なら5.000円ぐらいで済むしね」

建築コストが厳しくなる中、道具もメンテナンスコストと効率のなかで選択される時代。
目たて屋さんの仕事が減っていきました。

「仕事を辞めた大工さんが、使っていたのこぎりを売ってくれって言ってきたり、
目たてに出したが、一向に取りに来なかったり。時代なのかねえ」

棚の中には、行き先を失ったのこぎりが数本残されていました。
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目たて依頼があったのこぎりをみると 「大工さんの癖や性格がわかるね。」
同じように「目たてにもその職人のこだわりや技術が見えるんだよ。」
「もちろん私が作ったのこぎりでないのも目たてを頼まれます。
比べてみると違いがわかるでしょう。」
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確かに、刃の勾配の違いもわかります。

どんな仕事のためののこぎりか、どんな木を切るのに使うのか、
力の入れ具合なども考えて目たてが行われます。
切れ味を競う目たての技術は使う相手(人、木)を見ることから
始まるんだなと思います。

「あさり出し方は先を広く、手前(手元)は狭くするんだよ。
そうすれば力が少なくてひくことができるからね。」
日本ののこぎりは引いて挽く。
欧米は押して挽く。
なるほど。
あさりの説明は ここはこちらに頼ろう。http://e-tech.life.hyogo-u.ac.jp/kyouzai/nokogiri/sikumi.html

あさりだしにはいろんなサイズの金づちを使います。
往年の道具を見せてくれました。
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これは目たての際、のこぎりを挟む板。

目たては根気勝負の仕事です。
切れ味はそれで決まる。

目たて依頼ののこぎり状態は様々です。
刃こぼれのしたもの、部分的あさりが曲がったり減ったもの。

作業はまず、のこぎりの刃の上端の通りをまっすぐにすることから始め、
そこから刃の形を作っていき、あさりを出し、研いでいく。
持ち込まれたのこぎりが自分の仕事ではなかったら、他の職人の目たて技術も学びながら。
最後にあさりの再調整。
こんな手順かと思います。

「こののこぎりは、刃の間隔を先と手元と変えたんだ」
最後の仕事として棚の中に置いてあるのこぎりを取り出しました。
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「こうすれば力が伝わりやすく、切りやすいし、用途も広がるんだよ」

力任せに挽くのこぎりではのこぎりが泣いている。
のこぎりにも、人にも、木にも負担をかけない刃をつくる仕事が私の仕事だよ。
中屋さんはそう言いたいのだと思いました。

「そののこぎり売ってますか。」
「残り少ないけど数枚あるから、いいよ。」

のこぎりの包み紙は昔から、新聞紙やチラシ紙。
油紙もあったな。
丁寧に刃を包んでくれて
「大事に使ってよ。」「はい」
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仕事場の隅には、引き取りに来ないのこぎりが残されています。
仕事の移り変わり、人の移り変わり、道具の移り変わり、価格の移り変わり。

チラシ紙に包まれ、取り残されたままのこぎりにも
職人の技が潜んでいます。

中屋さん、ありがとうございました。
きっと、間違って書いたところあるかと思います。
本当に言いたかったところを汲んでいないかと思います。
でも、藤枝で守ってきていただいた「職人の技と心」は
伝えられそうです。 これからも話していきます。

ドイツには職人の技術の質を表すマイスター制度があり
社会が大切に職人を育て、その技術や修行歴を評価、尊敬している。
そんなドイツでも先日のNHKで、ものづくり現場の危機が紹介されていた。
と誰かが言っていました。

やっぱり、家は自分(住まい手さん)が手を出せる場所がいっぱいある家がいいなあ。
子供たちは家に手をかける親の背中を見て育ち、ものづくりを覚えていくからね。

あっ、板塀の板が積んだままだ。息子に電話し直す日を決めよう。
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by hiho-sugi | 2012-06-03 09:23 | 大切なものを残す